加藤亮太郎新作・藍織部について
by 森一馬当店でも人気の加藤亮太郎氏の織部作品。窯変織部に始まり、前回当店で取り扱わせていただいた瑠璃織部、そして今回そのバリエーションの中に「藍織部」という新たな織部が加わった。織部過渡期に美濃で生まれた染付、藍織部を、この度亮太郎氏はご自身の作風で表現してみせた。まさにこのタイミングで話を聞かねばということで、織部について深掘り、二度目のインタビュー。
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藍織部について教えてください。
はい、まず桃山時代に織部という焼き物が生まれ、青織部、赤織部、鳴海織部、弥七田織部など、様々なバリエーションが登場します。
織部というのは、異なったもの同士を複合合体させて新しいものを生み出しプレゼンテーションする、サービス精神こそ織部の思想ですから、そうやってどんどん多様化していくわけです。
その中で慶長から寛永年間の過渡期の頃に、コバルトを使った染付が出て来ます。
美濃染付、寛永染付とも呼ばれていますが、まさに織部らしい遊び心のある絵付がなされているため、織部の流れの中に染付が入ってきたという文脈で藍織部とも呼ばれています。
クスッと笑えるような絵付けなんですね。
例えば、耳が凄く長いうさぎとか、いわゆる昔からあるモチーフをデフォルメして、茶席でゲストに喜んでもらえるような染付が施されています。
まさにそれは織部らしいですね。亮太郎先生にとっても織部もそのようなものであると考えますか?
そうですね、織部って人を喜ばせよう、楽しませようというサービス精神で、ではそれは何なのかというと、結局はおもてなしの心であり、人を喜ばせるためってことはやはり優しさなんです。
優しさ。
自己満足であればただ自分の造りたいものを造ればいいのですが、そうじゃなくてお客さんを喜ばせようという優しさ、相手方に対する思いやり、もてなしの心から生まれてきているものなので、それはやはり優しさだと思うんです。
織部というのは。
良い話が聞けました。笑
はい。笑 ただ珍奇でひょうげたものを作るのではなくて、人を思う心からそういったものが出来てきた、織部を造る上でそういう真意を汲み取らなければいけないと思います。
おもてなしの心、まさに茶の湯の心でもありますね。
そうです。その行き着く境地のようなものですね。
そういった中で、その藍織部というものをどうやって私の中で表現するか考えた時に、私の家系には三彩の流れもあるわけです。
卓男先生からの流れですね。
はい。そういった流れを汲んで、コバルトを抽象的に絵付けして、穴窯で焼成して灰を被せたら、灰がかかった部分が白くなり、そこに綺麗にコバルトが流れて出て。
更に片身替で灰釉の緑も入り、三彩ですね。
実際に具象的な絵が書いてあるわけではないのですが、私なりの解釈と言いますか。
藍織部を、亮太郎先生の受け継いできたものとご自身の作風で解釈されたんですね。
そうです、自分のこだわりでもある穴窯を用いて。
この白い卯の斑のような色合いは元々予想されていたのですか?
実験を繰り返して、窯の中で灰がしっかりかかるような場所で試して、強い窯変をかけることでこのように白く変化しました。
片身替になっている辺りも見どころがあって美しいです。
前回扱わせていただいた瑠璃織部もですが、どんどん作域が広がり、まさに前回のインタビューで仰っていた「伝統的な美濃焼はかけ合わせればいくらでもバリエーションは広がる。」というお言葉通りになっていますね。
そうですね。いわゆる伝統技法をやってはいますが、それは単なる懐古主義ではなく、現代でも桃山の延長線上でそれは続いていて、まだまだ新しいものが生み出せるんだということを、現代性を持った中でやっていきたいと思っています。
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