ダニエルセコの茶盌が入荷しました
by 森一馬チェコ・クンシュタート近郊に住む陶芸家、ダニエル・セコ。
初めて彼の作品を目にしたとき、その丁寧な作りと、日本的な美意識をしっかりと踏まえた高台、そして見込みの造形に強い感銘を受けた。SNSを通じて海外作家の作品を見る機会は多いが、多くの場合、掲載されるのは正面からの写真のみである。底の裏である高台の処理や、覗き込んだときの形にまで意識を向けるのは、日本人特有の視点とも言えるため、それ自体は不思議なことではない。
しかしダニエルの茶碗の投稿には、必ず見込みや高台側からの眺めが含まれている。それは作家自身が「私は理解しています」と静かに示している証のようでもあり、実際に作品を手に取ると、見込みや高台に限らず、ほのかな歪み、窯変の理解や口づくりに至るまで、茶盌という器を極めて細部まで理解し、また日本陶芸をリスペクトしているかが掌を通して伝わってくる。
ダニエル・セコは1976年生まれ。チェコ随一の陶器産地として知られるクンシュタート郊外に暮らし、18歳から陶芸を始めた。20代の頃、国際交流プログラムを通じて日本の陶芸家・日下部正和のもとを訪れ、日本の陶芸に初めて触れる。その後、幾度となく益子を訪れ、益子の陶芸家・竹下鹿丸らとともに薪窯焼成を経験する中で、日本の茶陶への興味と深いリスペクトを育み、抹茶碗の制作へと向かっていった。
現在、彼の抹茶碗は欧米を中心に高い人気を誇っており、作家本人も「これほど欧米で抹茶碗の需要があるとはまったく知らず、自分でも驚いた」と語るほどである。実は私は1年以上前に彼の作品を個人的に購入しており、当時すでにコンタクトを取っていた。しかしほとんどの作品が完売状態で手元に無く、1年以上かけてようやく今回窯と土で紹介することが出来た。
チェコの歴史ある窯業地クンシュタートの土には、長い時間をかけて積み重ねられてきた大陸の記憶が静かに宿っている。その土が炎と出会い形を得たダニエル・セコの茶盌には、日本の茶陶への理解と、異なる土地の歴史が重なり合う独特の気配が漂う。
器を通して、その土地の時間と大地の物語に思いを巡らせていただけたなら幸いである。